その② 堀辰雄文学記念館

堀辰雄文学記念館に行ってきました。終わってみれば50名の定員が満員で、自分で言うのも何ですが「大盛況」でした。自分以外の堀の読者に会うことはあまりなかったので、得がたい思い出でした。

前日はフランス文学会に参加しましたが、「堀辰雄のプルースト受容」を続けてきたため、堀読者の先生方から個人的なお話を教えてもらいました。堀のプルースト理解の正しさや、作品の相関関係や、堀辰雄にまつわる実体験を踏まえたエピソードなどです。その情報を持ち、軽井沢に行ったのですが、「青森と太宰」にも匹敵する「聖地」です。高齢の方になると、堀辰雄が散歩しているのを見かけたという人、話したことがあるという人などが少なくありません。来場者からもそういったお話を聞かせてもらいました。

極めつけは堀辰雄の幼女・菊地和世さんでしょう。堀の姪(妻・多恵子の姉の娘)であり、その後に堀の幼女となったそうですが、堀の生前の記憶が鮮明に残っているようで、様々なエピソードを教えてもらいました。

また、興味深いのは「軽井沢・追分の人の知識」と「一般読者(僕を含む)」の違いです。僕の研究テーマである「信濃の半跏思惟像」は、堀の『大和路・信濃路』に描かれるものですが、作中にはその仏像が特定されておらず、研究書にも記述がありません。しかしそれが文学館の近所の泉洞寺にあるのです。そして会場の皆さんはそのことを普通に知っていました。これは、いわば「観光資源」である石仏の位置づけに関わります。やはり歩いてみなければわかりません。

こうなってくると「文学」と「観光」、すなわち聖地巡礼ツアーという企画が重要性を帯びてきます。使い古されたテーマではありますが、作家の伝記的な事実を学ぶ意義を改めて感じた一日でした。